そんな独裁兄弟ベラルーシの動向がアゼルバイジャンでどのように報道されているかまとめてみました。(テレビは解約しちゃったので新聞・ウェブメディアを中心に) メディアは税制で優遇され、記者には国からアパートが提供されるという公然賄賂国家アゼルバイジャンでは、ジャーナリズムのかけらもなく、また凄まじい情報統制が行われているということをご認識頂けるかと。(テレビではBBC等が流れているので、英語のできる人はベラルーシの「正確な」状況を知っています) Azerbaycan 「ベラルーシは今後4年間国家を発展させる道を選んだ ベラルーシで8月9日に実施された選挙は世界が最も注目するイベントの一つであった。...26年に渡り国を治めたルカシェンコ大統領の再選が争点の一つであった。在任中、彼は経済の発展に努め、国を安定させ、地政学的要所に位置するベラルーシを政治的成功に導いた。今日ではベラルーシは国際的政治イベントを誘致し、また兵器・工業製品・農産物の輸出国となった。これらルカシェンコの実績は対立候補の追随を寄せ付けないものである。...各国のリーダーがルカシェンコの再選に祝辞を述べている。アゼルバイジャン大統領イルハム・アリエフはルカシェンコに賛辞を贈った最初のリーダーの一人であった。...」 BiG.AZ 「ベラルーシの政権辞職 ベラルーシは新政権を樹立する手続きに入っている。政府はルカシェンコ大統領の辞任を受理した。大統領は新政権の樹立を指示した。8月9日に実施された選挙でルカシェンコ大統領は80.1%の得票で当選したことを付け加えておかなければならない。」 Musavat.com 「ベラルーシの反政府勢力に対し刑事訴訟が提起された 反政府勢力による評議会の設立は、平和的な権力の移行に反するクーデターである。...反政府勢力の目的は力で実権を握ることである。...」 この凄まじい独裁者忖度ww ベラルーシのうねりがアゼルバイジャンに飛び火しないかビクビクしてるようです。 さてさて個人的に気になるトピックについて語っていこうと思います。 ①ロシアはベラルーシに侵攻するか ベラルーシの状況ですが、ルカシェンコちゃんは必至に人民をなだめてますが、ほっといたらもう政変・革命までいっちゃうのではないかと思います。即ち欧州における数少ない親ロ国家がまた一つ西側の手に落ち、ロシアがヨーロッパと国境を接する国は全て西側という状況です。 ウクライナ然り、ジョージア然り、手籠めにした女性が逃げようとするとDVで追い打ちをかけるのがロシアのやり方です。 おそらく今回もパンデミック関係なしにいざ政変に突入しそうなタイミングか、政変が起こった後のタイミングで軍事介入すると思います。そうしないと中央アジアの旧ソ連諸国も雪崩を打ってロシア離れしちゃいます。 とはいえせいぜい小規模な見せしめ程度かと。 この状況下で例えばベラルーシ全土を制圧してもとても統治できず、ルカシェンコの二の舞になるだけです。また、ベラルーシにはウクライナやジョージアほどの戦略的重要性もありません。 軽く一部の国土を削って大都市に迫る程度なのではないでしょうか。
ルカシェンコちゃんは最近西部のポーランドとの国境沿いに軍を配備したようです。
②アゼルバイジャンでも同様の政変・革命は起きるか 本ブログでも再三指摘している通り、アゼルバイジャンはとてもヤバい国であり、人々の不満も溜まっており、最近は抗議デモや暴動も散見されます。 とはいえこの国で政変・革命を起こすにはまだまだ時間がかかると思います。 理由としては、 1) 独裁者がそこまで嫌われてない 情報操作とブレインウォッシュの賜物で、アゼルバイジャンの独裁者アリエフに敬意を示す人はかなりいます。これはルカシェンコちゃんとの大きな違いでしょう。 2) 政変・革命を起こすだけの民度がない フランス人はSNSのない時代に人民の意思で革命を起こしました。アゼルバイジャン人に同じことができるでしょうか? ブレインウォッシュで考える脳みそを奪われ、抑圧により反対意見を述べることすら憚られる環境に慣れ切ったアゼルバイジャン人が、天下国家の方向性を議論し、自ら国の未来のために行動するとは思えません。 3) イスラム的共同体 イスラム教徒の特徴ですが、外部の意見に対するアレルギー反応がとても強力です。そのため、この人たちには「こういう考え方もある」「世界はこうなっている」という意見は受け入れられづらく、「私の国ではこうなの」という謎のロジックで全て跳ね返されてしまいます。 4) 誰も得しない 正直これが一番大きな要因です。アゼルバイジャンで政変を起こしても誰にも何のメリットもないのです。 「世紀の契約」と呼ばれるAzeri-Chirag-Deepwater Gunashli (ACG)油田の権益を見てみましょう:
ロシア勢が見られませんが、別途Baku–Novorossiyskパイプラインでロシア経由で輸出するルートもあり、ロシアのエクスポージャーもある状況です。 既に油の権益があり、東西双方にパイプラインの通っている国で政変を起こすメリットがありますか?? どれだけアゼルバイジャンが無茶苦茶だろうがおそらく誰もこの国に介入することはなく、結果「アラブの春」も「色の革命」も関係なく独裁者が生き残ってしまったのです。 「アゼルバイジャンの春」は遠い
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ついに事が起きました。
アゼルバイジャンは集会禁止なのですが、反政府グループがバクー中心地で(平和的な)抗議集会を実施。警察隊が出動して、数百人が逮捕されました。 インターネットも使えず、中央銀行周辺が封鎖されています。 https://eurasianet.org/azerbaijan-detains-opposition-leader-and-reportedly-hundreds-more 「アラブの春」も「色の革命」も生き残った最後の独裁者アリエフですが、この局面もお得意の暴力警察を総動員して乗り切れるか見物です。 (※注:僕がこんな記事を書いているなんて絶対にアゼルバイジャン人に言わないでください)
アゼルバイジャンはイルハム・アリエフ大統領を始めとしたアリエフ一家というろくでもない独裁者一族が仕切っているのですが、やってることはほぼ映画の世界です。
話は少し逸れますが、ネット等でアゼルバイジャンは親日国みたいな情報を目にすることがありますが、これは嘘です。アゼルバイジャンでは誰も日本のことなんか気にしてないです。 ただ一つ言えることは、この独裁者イルハム・アリエフ大統領が超親日なのです。(日本から賄賂でも受け取ったのでしょうか??)おかげでアゼルバイジャンの石油関連プロジェクトに日本企業もかなり食い込んでますね。アゼルバイジャン人の中にもごくまれに親日の人を見かけるのですが、そういう人はたいていアリエフ支持者だったりします(あくまで私統計ですが)。 もしアゼルバイジャンで政変・革命が起き、アリエフ政権派が倒れるような事態が起きたら、日本の立場・権益はどうなってしまうのでしょうか?? さて、アリエフ一家に対するアゼルバイジャン人の反応はというと、(驚くべきことに)概ね好意的です。というのも、
ろくでもないアリエフ一家ですが、最後に挙げた外交手腕に関しては評価に値すると思います。 イラン・イラク・シリア・ジョージアと周辺諸国が大国との戦火に巻き込まれる中、東西両陣営と絶妙な距離感を保ち、国を戦火から守ってきた外交手腕は見事です。ジョージアやウクライナが仕込み不足の状態でロシアに噛みついて、ぼこぼこに攻め込まれたのとは雲泥の差ですね。(しかしロシアは女々しい国です。都合が悪くなるとすぐ暴力です。) 地理的・歴史的にラッキーだったという要因もあります。アゼルバイジャンはソ連の一部で、すぐにでもロシアが軍事展開できる位置にあり、トルコとも歴史的な結びつきが強いため、西側陣営としても爆弾落として石油泥棒をするにはリスクが高すぎます。また、内陸国なので油田を奪っても輸出するまでが大変なので(第三国を経由する必要)、そもそもアゼルバイジャンに攻め込むロジックが乏しかったというのもあると思います。 とっても危険なパワーバランスの緩衝地帯に位置しつつも、上記のような特殊な状況をフル活用し、ロシアとの距離も慎重に保ちつつ、ゆっくりじっくり西側の資本・技術も取り入れパイプライン開発をし、石橋を叩いて渡るように外交の舵を切ってきた歴史・手腕は見事としか言いようがありません。 さてさて前置きがとても長くなりましたが、私がアゼルバイジャン人と接して感じた「独裁国家の特徴」を紹介したいと思います。 ① 英語が苦手:基本中の基本ですね。言語は海外からの情報流入を調整するファイアウォールです。国民は英語が話せないので、世界で何が起きているのかという情報を知りません。話のネタはローカルトピックばかりです ② メディア統制:国民の主な情報源はテレビなのですが。国営メディアは「アゼルバイジャンは素晴らしい国だ」という自画自賛情報を垂れ流してます。海外コンテンツはロシアとトルコの番組ばかりで、やっぱりその外の世界で何が起きているかは分かりません。アゼルバイジャンが世界から非難されるようなことがあっても国民は知りません。(それにしてもロシアやトルコの番組は本当につまらないです) ③ ビザポリシー:事前にビザを申請することなく入国できる国籍はかなり限られてます。旧CIS諸国(ソ連勢)、湾岸諸国・マレーシア・インドネシア(イスラム勢)、トルコ(母国)、日中韓星(人畜無害のアジア勢)、イスラエル(移民が結構いる)のみです。それ以外の国籍は事前にe-visa等のビザを取得して入国する必要があります。要は宗教的・文化的に衝突しなさそうな人達に対してまず優先的に国境を開いているのです ④ 自己承認:情報統制と洗脳的教育の賜物でしょう。アゼルバイジャン人と話していて感じるのは強烈な自己承認と承認欲求です。彼らの根底にあるのは、アゼルバイジャンはいい国・アゼルバイジャン人はいい人・アジアや中東はダメな国・アジアや中東の人はダメな人、というものです。これは本当に気持ち悪いです。彼らと話すと二言目には「アゼルバイジャンはどう?」「料理はおいしい?」「街は美しい?」「人々はフレンドリー?」「いい国でしょ?」などとアゼルバイジャンを褒めることを強要してきます。私は一切リップサービスをせず、率直なダメ出しをするのでアゼルバイジャン人は悲しそうな顔をします。というか冷静に他の国と比較すれば、たいていのトピックにおいて、「アゼルバイジャンが」相当にダメな国なのですが、なぜか主語が入れ替わって、「他の国が」ダメになってしまうのです。アゼルバイジャンに限らず、ソ連の人々と話していると、この「主語が入れ替わる」という現象によく遭遇します。例えば、ソ連の犯罪的な慣習をあたかも外国人が行っているかのように話し、外国人を悪者にするというものです。「この送金はマネーロンダリングか?Invoiceを見せろ」「違法な輸出の可能性がある。スーツケースを開けろ」といった感じです。マネーロンダリングも違法貿易のお前らアゼルバイジャン人の得意技だろ!まずはてめーらの大統領を逮捕しろ!と言ってやりたいところです。本当に気持ち悪いです。まぁソ連は外国からの情報流入で崩壊した国なので、外国人に敏感になるのは理解できなくもないですが ⑤ 仮想敵:これも基本中の基本ですね。独裁国家は必ず外部に敵がいます。外部の敵に国民の敵意のベクトルを向けて不満のはけ口とするのです。アゼルバイジャンの場合は長年領土紛争を抱えるアルメニアが仮想敵です。みんな本当にアルメニアが嫌いです ⑥ 金融リテラシーの低さ:日本をも凌ぐ金融リテラシーの低さです。株式なんてまず分からないですし、投資といったら不動産投資ぐらいしかありません。まぁこれも当然で、国民に経済や金融の知識をつけてしまったら、いざ経済運営が上手くいかなくなった時に政権批判の引き金になってしまいます。アゼルバイジャンが実はユーラシア大陸の最貧国であるという事実にも国民が気づいてしまいます こんな話をすると日本との比較で「日本に生まれてよかった」「やっぱ日本はいい国だ」みたいな反応をする日本人が本当に大勢いるのですが、そういう日本人に一言、『日本も同類ですよ』。勘の良い人はもうお気づきかと思いますが、日本も丸っきり同じ状況ですね。
そう、日本は日常生活からメディアに至るまで「独裁国家がよく用いる国家統治の手法」が浸透しており、結果として超抑圧的で超排他的で、それでいて超安定な(まるで独裁国家のような気持ち悪い)社会が実現された超特殊な民主国家なのです。日本の皆さん、いい加減気づいて下さい。 民主主義国家でここまで統制が厳しいのは日本と韓国ぐらいですよ。日本の皆さん、もっと世界に出て冷静に国際比較しましょう。 ところで、各国の情報統制・民衆統治の手法には特色があって面白いです:
さてさて、誤解しないで欲しいのは、日本が独裁国家であり、天皇家が独裁者であるみたいな主張をしている訳ではありません。少なくとも平成天皇に関しては(アリエフ一家みたいな)独裁者と呼ぶ程の権力は有していないでしょう。 ただ、日本は四方を海という自然のファイアウォールに囲まれた環境で、江戸幕府が200年に及ぶ鎖国を実施し、その後も現在に至っても英語力やメディアを調整弁として情報鎖国状態を実現しています。一方で統治体系はというと、天皇家という一つの家系が、時には象徴として、時には現人神として、時には独裁者として、時には傀儡として、3000年間一国の頂点に君臨しているのはかなり特殊であると言わざるを得ないでしょう。(令和天皇はどのようなポジショニングを取るのか見物ですね。) また、民主化したとはいえ、安倍総理も麻生副総理も天皇家の親戚であり、国会が天皇家の家族会議となってしまっているのも違和感があります。民主化してねーじゃんとwww(まぁでも安倍政権は久々にまともな政権ですね。最近の他の政権がひど過ぎたか?) 要は、日本では一つの家系がずっと頂点に君臨しており、(世界ではそれを独裁者と呼ぶのですが、)それ故、一家系が安定的に国を統治するための手法に関してはとっても経験豊富なのです。日本がアゼルバイジャン始め世界の独裁国家と似通っているのは当然ですね。 こういった背景もあり、天皇家は世界の独裁者の憧れの的です。3000年間に渡り一家系が一国を統治して、民主化後も象徴的ポジションをキープしている訳なので、独裁者からしたら完璧なキャリアパスです。 だからこそ世界の独裁者は天皇家に敬意を表し、例えばUAE等の湾岸独裁諸国では天皇誕生日に高級ホテルで日本国旗が掲げられニュースでも結構報道されます。湾岸諸国の独裁者等が来日した際は必ず天皇と面会しますよね。これには有色人種でありながら真っ先に近代化を成し遂げ、ロシアに戦争で勝利し、アメリカも戦いを挑み、敗戦しつつも復興を遂げ、また、人畜無害な仏教国であるという特殊な背景も影響しているのでしょう。 ところでこの「独裁国家の憧れの的」という謎のポジショニングですが、私はもうすぐ日本はこのポジションを失うであろうと見ています。 理由は単純で、まず中国という有色人種の一党独裁国家が、民主化することなく経済発展を成し遂げ、超大国の座をアメリカから奪うであろうからです。これは早ければ数年の内に実現するでしょう。 また、北朝鮮も自前で核・ミサイルを開発し、アメリカと対等と渡り合ってしまいました。 要は中国・北朝鮮という新たな独裁国家の成功ケースが出てきてしまったのです。アジア・中東・アフリカでの中国と北朝鮮の影響力は相当なものです。(中東では早速カタールがイランと組んで、アメリカ・米ドル陣営に見切りをつけ、中国・人民元サイドに寝返りましたね。これがカタール危機の一つの側面です。アフリカに目を移すと、ジンバブエでは人民元が通貨として流通し、中国のコントロールの下クーデターも実施されました。) こうなってくると、もう日本は賞味期限切れです。 失われた30年の最後に、日本は「独裁国家の憧れの的」という(どうでもいい)ポジショニングも失ってしまうことになるでしょう。 |