カラバフ戦争の行方をことごとく的中させた当ブログですが、今回は門外漢のウクライナ戦争について予想してみたいと思います。 ロシアの最重要ターゲットはウクライナ南部の穀倉地帯とネオン関連工場だと思うのですが、ここらへんを落とせるか否かでシナリオががらっと変わってくるのかなと。 ↓みたいな感じで戦局が展開していくと予想しています:
敵を知り己を知らば百戦危うからず というわけで、本題に入る前にまずはロシア側の状況を分析してみましょう。 数字が苦手な人のために最初に結論だけまとめておきます。これは農地強奪戦争です:
ふー、順番に見ていきましょう。 ↓はロシアの過去10年の経常収支です。 想像通りというか有りがちというか、典型的な輸出主導の収支構造です。 原油価格の周期にあわせて輸出入がデコボコと変動するのですが、基本的には輸出入のプラスで、サービス収支と所得収支のマイナスを十分カバーしている状況です。 面白いのは、おそらく2014年のクリミア併合に伴う制裁の影響だと思うのですが、サービス収支・第一次所得収支のマイナス幅が減少しており、越境経済活動・投資活動が停滞し、ロシアがグローバル経済から切り離され、どうも内需完結型の経済に移行していっている様が見て取れます。 輸出入のプラスが圧倒的な状態で、対外支払いが減少しているので、経常収支構造はますます堅牢になります。 西側メディアはことさらロシアの経済危機を強調しますが、そんなに危機的ですか?? 貿易赤字を垂れ流している日本よりはよほど健全な収支構造に見えます。 こうやって国際収支を見るのは重要です。 プーチンは当然ウクライナ侵攻に伴い強烈な経済制裁を受け、ロシアがさらに世界から隔絶されることを想定していたはずであり、逆に言えば『さらに世界経済から切り離されてもロシア経済は十分やっていける』という確信がなければ戦争なんかできません。 この収支構造を見る限り、ロシアにとって輸出入さえしっかりしてれば、他のファクターは誤差みたいなものなのではないかと思います。 対外債務の状況も見てみましょう。↓は対GDP対外債務比率です。 ロシア政府の対外債務の大部分は実はルーブル建てなんです。中央銀行が輪転機を回せば返済できます。外貨建ての政府対外債務はたかだか200億ドル程度です。 西側プロパガンダメディアはことさらロシア国債のデフォルト危機を拡散しておりますが、一体どこに危機があるのでしょうか?? ロシアが国外に保有していた資産が凍結されたり、銀行がSWIFT送金網から外されたりしたから、"実務的"に利払い作業が大変というだけであって、本質的にロシアの経済構造が破綻しているわけではないのです。 経常収支に戻りましょう。 この健全な経済構造を支える根幹である輸出収支の部分を見てみます。 やはり石油・ガスの部分が屋台骨となっているのですが、資源価格に連動して乱高下するのは致し方なしです。 興味深いのは2017年以降石油・ガス以外の輸出が堅調に伸びており、直近2年間ではついに輸出収支の過半を非石油・ガスで占めるに至りました。資源国の印象の強いロシアですが、着々と脱資源経済を進めていたようです。 原油・石油製品・天然ガスの四半期毎輸出量(金額じゃなくて量)を↓に示しますが、天然ガスは上昇傾向に見えますが、やはり原油・石油製品は横ばいです。 石油・ガス産業以外の部分にも堅調な輸出入の秘密がありそうです。 ここは貿易統計を見てみる必要があります。 ↓にロシアの主要輸出品目を示します。 もちろん輸出の中心は石油・ガスなのですが、エネルギー・資源・工業製品は軒並みマイナス成長で、一方、穀物・農林産物が驚異的な伸び率を示しております。 どうもロシアは死物狂いで第一次産業にテコ入れをして、そういった努力が輸出品目の多角化につながっているようです。 ついでに輸入の方もチラ見しましょう。 ↓輸入額の推移です。輸出が好調な時に増えて、そうでない時は質素な感じです。 輸入の内訳を見てみると、食料・自動車・鉱物等が急激に減少していることが分かります。ふむふむ。 自動車は格安中古車主体の輸入に切り替えたのかもしれませんね。 食料品目の輸入減が見られるあたり、やっぱりロシアが死物狂いで第一次産業を育成していた匂いがプンプンします。 ここまでで総括すると、資源輸出一辺倒で、脆弱な財務基盤によりデフォルト寸前という一般的なロシア経済に対する認識は実は誤りなのではないかという気がしてきました。 このブログを書いている私自身が大変混乱しております。 数字が示しているファクトはロシアの多角化された輸出産業、第一次産業の驚異的な成長による外貨獲得、健全な経常収支構造、そして取るに足らない対外政府債務ということです。 図体がデカイだけで貿易赤字垂れ流しの日本よりよほどまっとうなビジネスモデルなのではないかと思えてきました。 う〜ん、、、ロシア経済の根幹である貿易の部分をもう少し深堀りしてみましょう。経済制裁の影響は如何程なのか。 ↓は2019年の主要貿易相手国です。対ロシア制裁に前のめりな48カ国は非友好国にまとめました。 これは衝撃的ですね。 ロシアに友好的・中立な中国・ベラルーシ・トルコ・カザフスタン・その他諸々を合わせても貿易額のたかだか4割程度しかなく、輸出入共に非友好国が過半を占めています。 ロシアの成長エンジンである貿易は大いに影響を受けそうです。もう少し分解してみましょう。 ↓はロシアの2019年の欧州非友好国向け輸出($182bn)の内訳です。石油・ガス・練炭・タールオイル・金・プラチナ・ダイヤモンド・アルミ・銅・ニッケルといった主要なエネルギー・資源関連の品目で輸出のなんと約8割を占めています。 これらのエネルギー・資源品目を欧州非友好国側から見た輸入元が↓になります。 ロシアが17.9%と圧倒的です。。。この数字は各国の輸入の単純合算なので、域内を通過するダブルカウント分を考慮すれば、ロシアへの実際の依存度はもっと高いのではないでしょうか。 ↓のチャートはEU+イギリスのガスの供給元の推移です。元記事によると『ヨーロッパで利用されるガスの4割、EUの輸入原油の25%以上がロシア産』とのことです。 まとめると、ロシアの経済のエンジンである輸出において、欧州非友好国向け輸出のほとんどはエネルギー・資源関連であり、またロシアの供給シェアは圧倒的であり、欧州非友好国が威勢良く経済制裁だと言ったところですぐさまロシアからの供給を代替するのは不可能です。というか数十年かけても最大供給元はロシアであり続けるのではないでしょうか。貿易決済も必要なためにSWIFTからの完全除外もできません。 すなわちロシアから欧州へのエネルギー・資源輸出量はすぐには減りそうにありません。むしろウクライナ戦争のおかげで資源価格も上がり、ロシアとしては輸出額が増えて焼け太りということになるのではないでしょうか。 経済制裁にしても、外資撤退に伴い短期的には失業者が増え国民の幸福度も低下しますが、長期的には撤退した海外サービスが(勝手に外資企業資産を乗っ取った)ロシア国内サービスに置き換えられ、またまたサービス収支が改善する方向に向かうのでは? 日本を含むアジア太平洋の非友好国についても状況を見てみましょう。 ↓はアジア太平洋の非友好国に対するロシアの輸出品目です。 欧州とそっくりですね。 原油・ガス・練炭・アルミ・プラチナで輸出の約8を占めています。 これらの品目をアジア太平洋の非友好国側から見た輸入元が↓になります。 やはりロシアの存在は大きく、アジア太平洋とは言え、これらエネルギー・資源輸入の代替元を探すのは困難でしょう。日本がサハリンの権益を放棄するわけもないですしね。 ↓では最大の貿易相手中国に対してロシアは一体何を輸出しているのでしょうか? 圧倒的に油なんです。 中国から見た原油の輸入$226bnの内訳↓ではロシアは約16%でトップシェアですが、金額だけの比較で見ると、仮に欧州非友好国がロシアからの原油輸入を2〜3割減らせたとしても、中国が支援として多少補填輸入するのは可能な気がします。 意外にもガスは少ないのですね、と思ったら、ちゃっかりウクライナ侵攻直前に中露新パイプラインの建設を発表してました。 どうも話が大きくなっているようで、このパイプラインのキャパは5ft3/日程度のようで、だとすると欧州非友好国が頑張って何割かロシアからのガス輸入を減らしてもやっぱり中国向けで補填できちゃいます。 中国としても価格交渉力のある輸入元が増えてウハウハでしょう。 このパイプライン関連の決済ですが、なんとユーロ建てを検討しているようです。これは欧州は揺れます。 おそらくプーチンは欧州に対して「ロシアからの資源輸入継続してくれるなら支払いはユーロ良いよ、中国とのガス取引もユーロでやるよ」と裏で囁いているのでしょう。イラクで潰えたペトロユーロの夢再びです。これは欧(ユーロ)と米(ドル)を分断させる駆け引きにも見えます。 ここまではロシアの欧亜非友好国&中国への輸出を中心に見てきましたが、ほとんどエネルギー・資源関連の話に落ち着きました。でも違和感を感じませんか?? データが示していたのはロシアが死物狂いで食料輸出を増やして外貨獲得源を多様化してきたというストーリーですが、これまで全く食べ物の話が出てきません。 目線を変えて、ロシアの食料輸出の最大品目である小麦製品の輸出先を見てみましょう。 エキゾチックな国名が並びます。これがロシアの輸出の成長エンジンである小麦製品の購入者です。そうです、ロシアは第三世界向けの食料の輸出基地になっており、これら食糧安全保障をロシアに依存する国々がロシアの「友好国」となっているようです。 「Weaponizing Wheat」という論文ではロシアがかつてエネルギーでそうあったように、小麦の供給を牛耳って外交・安全保障面での利益を追求するとの指摘がなされています。 まとめると、ロシアのしたたかな戦略が見えてきます。
頭痛がしてきました。私の解釈が間違っているのでしょうか?? あまりにニュース報道で流れてくる情報と実際目に見えるデータに乖離があります。 さて、輸入に関してはあまり面白い発見はなく、まぁ非友好国から輸入が止まっても中国産で代替するんだろうなという程度の品目しかないのですが、一点だけ、北米非友好国(アメリカ・カナダ)からの輸入品目に特徴があります↓ 圧倒的に航空機を北米からの輸入に頼っているのです。食糧であれ工業製品であれ、たいていの品目は国産化もしくは中国で代替できても、航空機だけはやはりアメリカ頼みのようです。 だとすると輸入に頼らなければならない航空機を、なぜ借りパクするような愚行を犯したのでしょうか??一度そんなことをしてしまえば今後誰もロシアに飛行機をリースもレンタルもしてくれなくなります。 また頭痛がしてきました。 ロシアは外界からさらに隔絶されることを前提に、自給できない航空機を借りパクして当面の国内航空需要に対応し時間を稼ぎ、その後は国産もしくは中国産に乗り換えるという算段をしているのではないでしょうか??整備部品はしばらく中国が横流しするのでしょう。 さて、貿易の話はここらへんにして、話題沸騰のロシアの農業を見てみましょう。 ↓はロシアの主要穀物野菜の収穫量です。 やはりロシアが死物狂いで農業に注力してきたという仮説は正しそうです。過去20年で収穫量が倍増しています。 穀物輸出禁止に踏み切った2010年や2012年の不作を除けば基本的に右肩上がりなのですが、一方で直近数年間は収穫量が頭打ちになっているようにも見えます。 作付面積も見てみましょう。 面積は意外と横ばいですね。増えてるっちゃ増えてるけど20年で2割増ぐらいです。やはり過去10年ぐらいは堅実に面積を拡大していってますがね。 また地球温暖化の影響もあるようです。寒冷地が温暖化のおかげで耕地になり作付可能面積が増加すると。 どうもロシアの過去20年の急激な農業増産は農地面積の拡大というよりは、農業生産性の向上によるところが大きいようです。(肥料とか作付け回数とか品種改良とか) さて、↑の2つのチャートを見て強烈な違和感を感じませんか?おそらくロシアの農業の現場で何かが起きてます。 過去10年間の堅調な農地拡大にも関わらず、直近数年の収穫量は頭打ちになっているのです。 これはロシアの急激な農業生産増を支えた農業生産性の向上が限界にきていることを示唆しているのではないでしょうか? すなわち、これを以上面積あたりの収穫を増やすのはけっこう大変であり、輸出経済の成長エンジンである農業生産をさらに成長させるには、根本的に農地面積をに増やすしかないという段階に迫りつつあるのではないかと推察されます。 ↓にロシアの主要食品の輸出入額をまとめてみます。 かつては食料の純輸入国であり、ソビエト崩壊時には食糧危機に陥ったロシアですが、いつの間にか食料の輸出で稼ぐ国に変貌を遂げていたのです。 一方、肉・魚・パーム油・柑橘類あたりは未だに輸入が大きいです。 さて、稼ぎ頭の小麦は一体どこで収穫されているのでしょうか? 曰く、先述のウクライナ国境沿いの地方がロシアの小麦増産の成長ドライバーとなっているという分析です。 後述しますが、ウクライナ側も主要な穀倉地帯はロシア国境沿いでロシア系住民比率の高い南東部です。。。 分析をはじめる前から嫌な予感はしてたのですが、この戦争の目的って、小麦?? 豊かな途上国、貧しい先進国 世界第三位の経済大国日本にお住まいの皆様は、日本がとても豊かな国であり、自分の人生はハッピーなものであるという勘違いに陥りがちではないでしょうか? そんな勘違い日本人がいざ発展途上国をバックパッカーでもしてみると衝撃を受けてしまいます、『途上国民は意外といい暮らししてるぞ』と。 そうです。発展途上国でも毎日飯が食え、電気が通ってれば人並みの暮らしができ、意外と幸せなんです。 なぜGDPの小さな発展途上国でそんな幸せな暮らしが可能かというと、発展途上国ってけっこう食料・エネルギーの自給率が高い国が多いからです。最低限の生活インフラが国内で自給できて、国内の安い物価水準で提供されるから、見た目GDPが小さくてもその分生活コストも安く、普通に生活できてしまうのです。 一方で、見た目GDPが高くても食料・エネルギーを輸入に頼る日本のような国は生活コストが相対的に高く、実際の暮らしは貧しいのです。 ホロドモール ロシアとウクライナの歴史を語る上で避けては通れない話題があります。第二次大戦の足音迫る1932-33年、スターリンがウクライナを起こした人工飢饉です。 この年凶作で農産物の収穫が芳しくなかったにも関わらず、外貨獲得のためウクライナの富農から小麦を取り上げ、町も封鎖し、結果数百万人のウクライナ人が餓死したというお話です。えげつない。 ソビエト圏の歴史をちょっと調べるとこんな話ばっかりです。 犬も歩けばジェノサイドに当たる。 30年前のKGB職員時代に食糧危機とソビエト崩壊を目の当たりにし、また10年前の凶作でロシアが小麦の輸出禁止に追い込まれた苦い経験を持つプーチンの脳裏には、このホロドモールの光景がよぎったかもしれません。 北北朝鮮 上述のロシアの経済構造、小麦を活用した外交・安全保障戦略、NATOの東方拡大、そして、歴史的背景等を鑑みると、シナリオが見えてきます。
この2つのシナリオを天秤にかけ、合理的に後者を選択しただけではないのでしょうか?? 北朝鮮の北にもう一つ巨大な北北朝鮮ロシアが誕生しそうです。 対日テロ攻撃 ウクライナ戦争開戦直後、日本とアメリカの民間貨物船がミサイル攻撃を受けました。私はこれは間違いなく日米の民間船を標的にしたロシア軍のテロ攻撃だと思っています。 ロシア海軍を迎え撃つウクライナ海軍の唯一のフリゲート艦はドッグ入りしており(後に自沈)、ウクライナの実質的な海上戦力は小型ボートだけでした。 ロシア軍には対艦ミサイルを打つべき標的が存在せず、ミサイルを使用する必要すらなかったのです。 攻撃を受けた2艦は共に穀物を運搬する貨物船でした。やはり今回の戦争の目的は小麦であるという仮説が信憑性を帯びてきました。 敏感なヨーロッパ籍の船を避け、日本とアメリカの穀物船をターゲットにし、「ウクライナの小麦はロシアのものだ」と世界に高らかに宣言したのでしょう。 ウクライナの落とし所 ここまでほとんどロシアに関する投稿になってしまいましたが、そろそろ本題のウクライナについて語りましょう。
チベット高原 に中国が固執する理由は一体何なのでしょうか? 地図は見れば一目瞭然なのですが、チベットは東南アジア・南アジアを流れる多くの河川の源流なのです。 生命の源である命の水。アジアの国々の蛇口を握っているのは中国なのです。中国がちょいと蛇口を開け締めしたり、水栓の方向をいじったりしたら、たちまち下流のアジア諸国で大混乱が起きます。 中国はチベットで民族浄化を行ってまで外交・安全保障ツールとしての水源を押さえにいったのです。 この悪魔の戦略を実践した国があります。ウクライナです。 2014年のロシアの侵攻でクリミア半島を奪われ激おこプンプンになったウクライナは、ドニエプル川からクリミア半島へと繋がる北クリミア水路にダムを設置し、なんと水の供給を止めてしまったのです。これによりロシアが実効支配するクリミア半島では8割以上の水供給が消失し、農業は壊滅的なダメージを受けました。 これはジェノサイドダムと命名して問題ないでしょう。 今回のウクライナ侵攻の大義は小麦!ではなく、あくまで迫害されているロシア系住民の救出です。またロシアとしても多額の投資をしたクリミア経済がなんとか復興してくれないと困るというのは本音でしょう。 だからこそ開戦当初に全力でこのダムを破壊し(フェーズ1)、クリミア半島の水源を確保したのです。 イスマイル・セラゲルディンは言いました。
楔(くさび) 首尾よくケルソンのジェノサイドダムを破壊したところで、クリミア半島が敵に囲まれた陸の孤島であるという事実に変わりはありません。 次なるターゲットとして合理的なのは、実効支配化にあるドネツク・ルガンスクとクリミアをつなげる楔としてのマリウポリ・メリトポリあたりでしょう(フェーズ2)。 ISWの戦況マップもこの仮説を裏付けています。 ここらへんのウクライナ南東部はロシア人割合が高く、どっちがホームでどっちがアウェイか分かりません。 ↓ロシア語母語人口割合の図も載せておきます。 民主主義国家との闘い 最前線の戦場で何が起きているのか私には分かりませんが、西側プロパガンダによるとウクライナ軍が善戦しているようです。まぁたぶんそうなんでしょう。 要因としてNATOの軍事支援やロシア兵の士気の低さが挙げられていますが、ここで敢えて別の要因も指摘しておきたいと思います。 この戦争はロシアにとって久々の『民主主義国家に対する全面侵攻』だという点です。(久々というかほぼ初めて?) 民主主義は文字通り民衆が主体です。多くの場合、民主主義の実現には民衆が権力と闘い打ち破った歴史があるのです。ウクライナもクーデターのような形ですがこのプロセスを経験しました。 自らの力で権力を打ち破った経験を持つ民主主義国家の国民は骨太なんです。自分の頭で考え、自分の意思で行動し、力で屈服させようとしても抵抗します。 理不尽に受け入れ、上級国民ロシア人が銃口を突きつければ降参してしまうソビエト民とは一味違うのです。(ソビエト民はキレたら怖いですが。) そしてこの視点は日本人にとっても示唆に富むものです。我々日本の民主主義は占領国アメリカが押し付けたものであり、日本人の意思で獲得したものではないからです。 20XX年、ロシア軍が北海道に攻め込んできた時、果たして日本人はウクライナ人のように闘うことができるでしょうか? 大義 も当然重要です。大儀なき兵が如何に脆いか、大儀なき戦争が如何に泥沼化してきたか、歴史が証明しています。 そして20年前とのデジャブが面白いです。 20年前 アメリカ「イラクは大量破壊兵器を隠し持っている」 ロシア「それはでっち上げだ」 現在 ロシア「ウクライナは大量破壊兵器を隠し持っている」 アメリカ「それはでっち上げだ」 麦 さて本題の小麦に戻ります。最初にウクライナの主要輸出品目を見てみます↓ やはり第一次産業が大きく、トウモロコシや種子油が小麦よりも大きいのですね。 食い物に絞って輸出品目をロシアと比べてみましょう。 補完的ですね。ロシアが輸入に頼っている肉をウクライナは輸出に回しているのも魅力的です。ロシアがウクライナの食い物を獲りに行くのも納得です。 ウクライナの主要農産物である種子油・トウモロコシ・小麦の主要産地を見てみましょう↓ 小麦なんかそのまんまロシア人居住区と一致しちゃってます。種子油もそうですね。 やはりここらへんの農場と水源を押さえ、願わくばロシアに併合するのが今回の戦争の大きな目的でしょう(フェーズ3)。トウモロコシは北東部が主体なんですね。 私がロシアの大統領だったら、迷わずウクライナに侵攻してこの肥沃な農場を奪います。だってしばし経済制裁に耐えれば、その後は数世紀国家安泰になっちゃうんですもん。コスパ良すぎです。 ウクライナから奪った農地・工業地帯により、ロシアの輸出は数十億ドル、いや下手すると百億ドル程増加すると思います。戦費に数百〜数千億ドルかけても十分リターンは出ます。 さて、ロシアとウクライナが世界の食い物輸出市場においてどれだけ重要か、2020年の両国の合算シェアを見てみましょう。翻訳がめんどいので英語で勘弁ください。 えらいこっちゃ、えらいこっちゃ。 ウクライナの農場を取り込んだ新生ロシアは超食糧大国として世界の食糧安全保障を牛耳る立場になるのでしょう。さぁNATOは動くか? イスマイル・セラゲルディンは言いました。
米 ウクライナには食べ物以外にも戦略輸出品があります。半導体製造工程でも利用される希ガスのネオンです。世界のネオンの約半分がウクライナから供給されているのです。 歴史を紐解きましょう。 ウクライナには元々オデッサを本拠とするIceblick社というソビエト時代からの希ガス製造会社がありネオン供給で世界最大シェアを誇っていたのですが、オレンジ革命が起きた2004年に会社の経営権が譲渡され(新欧米派が乗っ取った?)、新社長がネオンの値上げを要求したため世界にネオンのサプライショックが起きました。 このIceblick社は2016年に清算されており、モスクワの大学でも教鞭を取る前社長のVitaly Bondarenko氏(親ロ派?)がサプライヤーやエンジニアを引き連れて独立しオデッサに設立したCRYOIN社が現在ウクライナ最大のネオン製造会社となっています。 ウクライナには他にもマリウポリを本拠とするIngas社と、首都キーウを本拠とするUMG RT社というネオン製造会社もあります。 これらの会社の空気分離・ネオン精製工場ですがマリウポリ、ハリコフ、ザポリージャ、クリヴィー・リフ、オデッサあたりに分布しております。驚くほどロシア軍の足跡と一致しています。 小麦にせよネオンにせよ、ウクライナのCrown Jewelは首都キーウではなく南部の田舎町にあるのです。 ウクライナが親ロ派地域でこんな戦略物資を製造しているのであれば、それを押さえない手はないでしょう。当然これらの工場とエンジニアは最重要ターゲットなはずです(フェーズ4)。 願わくばオデッサのCRYOIN社本社は是非とも欲しいところです。 地政学的な意味でもオデッサは重要ターゲットでしょう。 半導体は産業の米と言われています。だとすればネオンを米に分類しても問題ないでしょうwww そう、この戦争は麦と米を巡る食糧戦争なのですww ところで、「麦」の観点からもオデッサは最重要ターゲットです。 ロシアの目的はウクライナの農業であると繰り返し指摘してきましたが、その目的を達成するには広大な領土を制圧する必要はありません。港さえ押さえてしまえば十分なのです。ウクライナの沿岸部をロシアの領土にしてしまえば、ウクライナが農産物を輸出しようとしても、ロシアに押さえられた港を使用せざるを得ません。 ロシアは穀物商社としてウクライナの農産物を取扱い、労せずして輸出を拡大できるのです。 オデッサまで攻略してしまえば、ウクライナの主要港はほぼほぼロシアの勢力圏になります。 プーチンは何十年かかろうがオデッサを攻略するまで絶対に諦めないでしょう。 浣腸痴態 今年の流行語対象は『緩衝地帯』でしょうか。この言葉を耳にしない日はありません。 力と力が衝突する地点には間にクッションを挟んで、大きな衝突が起きないように、また、互いの安全が保証されるように、この緩衝地帯が度々出現します。 ジョージアの南オセチア・アブハジアであったり、日本の北方領土なんかも近い存在かもしれませんね。 さて、上述のようにウクライナ南西部のオデッサが重要ターゲットであり、ロシアはオデッサに侵攻し、オデッサを支配したいと考えていると仮定しましょう。その場合「オデッサの支配を盤石のものとする」ためには「オデッサを盤石に支配する」だけでは不十分なのです。 被弾を恐れずに、勇気を振り絞り、ガードを固め顎を引き、さらにもう一歩深く相手の懐に踏み込みんだところに緩衝地帯を設定して初めてオデッサの支配が盤石のものとなるのです。 これはすなわちオデッサを飛び越えたウクライナ周辺領土、さらには、モルドバに戦火が飛び火する(戦線を拡大させる必要がある)ことを意味します。 モルドバ東部の親ロ派支配地域であるトランスニストリア。ここにタッチするまではロシア軍は西に進軍を続けるのではないかと思います。 願わくばモルドバ軍を押しのけ、トランスニストリアの西部の国境をもう一段押し込んだところに緩衝地帯を設定するのではないでしょうか? 多国籍キャバクラ「プーちん」錦糸町店 情報が錯綜しています。 残虐なチェチェン部隊がウクライナに進軍したと。 また、ナゴルノカラバフ戦争でもアゼルバイジャン側で投入されたシリア傭兵が、今度はロシア側で参戦するというニュースも出ています。 一方で、停戦協議も開かれ建設的な話し合いが持たれているとの嬉しいニュースも出てきました。 色んな情報が入り乱れ、判断に困る場合は相手の立場になって考えてみると状況が整理できるものです。 例えば皆さんが錦糸町に多国籍キャバクラ店「プーちん」をオープンしたとします。満を持しての開店でしたが、騙して連れてきたロシア人キャストのやる気がなく、イマイチ売上が伸びません。 そこで聡明なあなたは解決策を思いつきました。VANILLAに求人広告を出してシリア人キャストを雇おう! ここで考えてみてください。求人広告を出した直後に店閉めますか?? 求人とはお店のテコ入れのための打ち手であり、閉店の準備ではありません。 そう考えると停戦協議はシリア人傭兵の採用のための時間稼ぎであり、この段階で停戦する気なんてサラサラないというのが本質に近いのでは? ロシアは既に最大級の経済制裁を受けています。コストが確定したのであれば、今からロシア軍がやるべきことは売上(戦果)の最大化です。 やる気のないロシア人キャストのテコ入れにチェチェン人キャストのヘルプが入りました。続いてシリア人キャストの大量投入です。 さぁ過激なサービスが展開され一気に売上増に邁進でしょう。 全土制圧 ロシアの目的はウクライナ南部だけなのでしょうか? ロシア軍の配置・進軍を見るとプーチンはもっと大きな野心を持っているように見えます。すなわちキーウ・ハリコフも制圧し、あわよくばウクライナ全土を手中に収めようと(フェーズ5)。 もちろん死者数やロシア国内世論次第の部分もあるとは思いますが、ワーストケースシナリオとしてウクライナ全土がロシアの手に堕ちるまで犠牲を厭わず進撃のプーチンが続くという展開も想定せざるを得ません。。。 あまり想像したくありませんが、そうやってウクライナ人を国土から追い出して口減らしをして、より多くの農地・輸出農産物を確保した方が長期的にはロシア経済にプラスになってしまうのです。ホロドモール2.0。 思い返せば、イカサマ選挙でドネツク生まれのヤヌコヴィッチを大統領にし、ハリコフ合意でクリミア半島に25,000人のロシア兵を駐留可能にした2010年は、ロシアが干ばつに見舞われ小麦の輸出停止に追い込まれた年でもありました。 今回のウクライナ戦争は、ロシアの10年がかりの安全保障+農地強奪計画の最終章だと考えてしまうのは私の妄想でしょうか? 戦争は司令室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ ところで便利な時代になりましたね。 ウクライナにいる個人がリアルタイムで情報を発信してくれ、遠くの地にいながら現場の声が入ってきます。こんな戦争初めてですね。 毎日届けられるボグダンさんの強気コメント(ボグダガンダ)、大好きです。 強気と言えば駐日ウクライナ大使も精力的に動いてますね。親ロ派の鈴木貴子を刺し、自治体にはロシアとの姉妹都市断絶を要求するなど、狂犬っぷりを発揮しています。こういう凶暴な一面が垣間見えると『やはりウクライナ人もソビエト民だ』ということが確認できて、ソ連通の皆様は嬉しくなってしまうのではないでしょうか? フェーズX 焦土作戦 ここまでのお話はロシアの経済分析に基づいており、プーチンが経済合理性も考慮した上でウクライナ侵攻を決断したという前提に立っています。もしこの前提が間違っていたとしたら? すなわち、プーチンは経済合理性や輸出産業のことなんか全く気にしておらず、頭の中は安全保障に全振りしていて、ウクライナをNATOの手の及ばない軍事的中立地域にできればそれで満足と考えていたとしたら、すべての議論が吹っ飛びます。 ロシアには安全保障上の要求だけを即座に満たす悪魔のオプションがあります。 キーウを制圧した後ウクライナ人を追い出して、原爆を投下して核汚染してNATOも誰も入れない中立焦土地帯にしてしまえば良いのです(フェーズX)。 『ヒロシマ・フクシマ・ウクライナ』です。 SFチックなシナリオですが、今のプーチンや狂人ロシア人を見ているとこのオプションすら現実味を帯びてきたと思います。 原爆を投下した後に彼らはこう言うでしょう『ナチスが核兵器を使用したんだ』と。 ブレインウォッシュ脳 息を吸うようにウソをつきプロパガンダ・フェイクニュースを拡散するプーチンやロシア人に皆様辟易とされているのではないでしょうか? 見かねたAnonymousがロシアのテレビで戦地の映像を流したり、海外在住のロシア人が家族に電話をしたりしていますが、私に言わせればそんなことしても無駄です。 みなさんソビエト式ブレインウォッシングを知らないのですか??流行に乗り遅れてますよ!! ソビエト式のブレインウォッシングを受けると思考回路が逆になるのです。
話す前から結論は決まっているのです。 国家や自分にとって心地の良い主張だけが受け入れられ、その主張に導くための証拠がフェイクニュースや歴史修正といったプロパガンダによって捏造され、そうでない情報は脳にインプットされることなく遮断されるのです。 ソビエト民にとって証拠や論拠とは調べて検証するものではなく、創るものなのです。
プーチンやロシア大使やロシア人が息を吸うようにプロパガンダを拡散していますが、あれはポジショントークではないのです。 本当に脳みその中であのプロパガンダのシナリオだけが受け入れられ、それに反する情報は自動的に遮断されるのです。 それでもソビエト民のプロパガンダに楯突いてくるやつがいたらどうするか?? ジェノサイドして黙らせちゃうんです。 法治国家・口治国家・暴治国家 国際条約を無視し、人道回廊も気にせず、平気で戦争犯罪に手を染めるロシア軍を見て、日本の皆様は「何なんだこの無法者達は」と憤っていることでしょう。 ですが、旧ソ連歴の長い私に言わせれば「こいつらそんなもんです」。 旧ソ連圏にお住まいの方は経験があると思いますが、法律で定められたことが全く守られてなかったり、契約が履行されなかったりなんて日常の一部です。 賃貸契約に家賃や賃貸期間がきっちり定められていても大家が「家賃変えよう」と言いだせば突然家賃交渉が始まり、その場の口約束で決められた内容が契約に勝り、気に食わなければ大家がわめいて強制退去です。 ソビエト連邦とは、法や契約が社会を律する法治国家ではなく、成り行き的なその場の口約束で物事が動く口治国家であり、不都合が生じれば実力行使で現状変更をする暴治国家なのです。 ロシアと国境を接する日本人は是非肝に命じておいてください。
そーゆー人達が日本の北に1億人程住んでいるという現実を。 中国が律する新欧州秩序 今回のウクライナ戦争において各国のリーダーのなんと情けないことか。
目立ちたがりのエルドアン(土)は仕事をしました。 クルド人迫害の手を一旦緩め、ウクライナ情勢に尽力し、ロシア・ウクライナ両国外相会談までこぎつけたのです。 この会談により何かが決定したわけではありませんが、まずは合コンの幹事同士が顔を合わせて連絡先を交換した(外相同士が交渉のチャネルを持った)ことに意義があるのです。 さぁチャットが開始されました! 後はお互いメンツを集めて、予算を決めて、お店を選び、一次会→二次会→三次会→お持ち帰りです! ゼレンスキーとプーチンはベッドでどのような寝技を見せ合うのでしょうか? 舞台を用意することになるのは、おそらく「ホテルCOVID」の支配人、習近平(中)になるでしょう。 これから北北朝鮮として世界から孤立するロシアに技術とインフラと外貨をもたらす生命線である中国は、暴君プーチンの手綱を握れる唯一の存在ではないでしょうか? 21世紀の欧州秩序、ひいては、世界秩序を決める新ヤルタ会談の行く末は支配人習近平が握っているのです。 支配人は見極めているのです。中国の国益と世界秩序のバランスを取る絶妙なポイントを。 支配人は見極めているのです。交渉の表舞台に上がるべき絶妙なタイミングを。 安全保障 百年の計 先のナゴルノ・カラバフ戦争や今回のウクライナ戦争を見て思うのは、安全保障における意思決定は向こう百年の国家の命運を決めるという残酷な現実です。 コメディアン出身の大統領はロシアが許すはずもないロシア離れを強行し、結果、国土は焦土と化し、国民は難民となりました。肥沃な土壌と戦略物資の生産能力も奪われ、国家存亡の危機に直面しています。彼がすがったNATOは何もしてくれません。 これもゼレンスキー演じる喜劇の一部なのでしょうか? この惨状を安全保障戦略の失敗と断ずるか、民主主義国家ウクライナ設立の過程と捉えるか、評価を下す役割は未来の歴史学者に譲りましょう。 一躍時の人となったゼレンスキー大統領ですが、政界引退後は是非日本のテレビ番組にも出演して、そのコメディアンとしての実力を披露して頂きたいものです。 『ガキの使い 笑えないクリミア半島24時』なんていかがでしょうか? ゼレンスキー、アウト! 松本、ジェノサイド!
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