私の予想結構当たりましたね。やはりSarsangダムはアルメニア側に残して、南部の戦線を押し上げたところで停戦でした。 選挙が接戦でトランプもカラバフどころではなかったのでしょう。米大統領選挙前の米露共同仲介とはいきませんでしたが、ロシアの仲介でようやく停戦です。 アゼルバイジャンが振り上げた拳をどこに下ろすのか注目していましたが、カラバフ第二の都市でありアゼルバイジャンの文化的起源とされるShushaでした。ここを墜とせばアゼルバイジャン国民も納得しますし、アルメニア国民も諦めがつく絶妙なポイントだと思います。この都市はカラバフの首都Stepanakertからわずか10kmであり、また物流の要所でもあるので、アゼルバイジャンが今後カラバフの金玉を握り、いつでも兵糧攻めができる体制が整ったと言えるでしょう。
話は逸れますが、以前指摘した通り、アゼルバイジャンに文化なんてものは存在しません。全て外国からのパクりです。伝統工芸品や伝統料理ですら近隣国からのCultural Appropriation(文化の盗用)です。文化のない国に文化的起源(Shusha)が存在するのも不思議な気がします。せめて一度文化というものを理解してから文化について語ってほしいものです。 ちなみにアゼルバイジャン人にとってのShushaは「日本人にとっての京都のようなもの」との答えが返ってきます。日本人として一言言いたいのは、京都とShushaを比べるなと。レベルが違い過ぎる。 さて再三指摘している通り、この戦争はアゼルバイジャン主導で、ほぼ間違いなくアゼルバイジャンから始めた戦争です。その最大の目的は独裁一家(アリエフ家・パシャエフ家)による独裁体制の維持です。 幼少期より強力なブレインウォッシングでアルメニア人は悪魔だと信じ込まされてきたアゼルバイジャン人は、今回の戦勝でハイになり、国内の諸問題もすっかり忘れて酔いしれています。大統領への支持もうなぎ登りで、独裁一家もほっと一息でしょう。 今回の戦争で味をしめた独裁者は、今後支持率が下がる度にカラバフでドンパチ始めて国民の不満の矛先を逸らすことでしょう。だからこそ今回の侵攻でカラバル全土を完全制圧するのではなく、(後々いつでも戦争できるように)首都Stepanakertを含む一部をアルメニアの管理下に残したのだと推測します。まぁ完全に予想通りです。これでしばらく独裁体制は安泰でしょう。 以前アゼルバイジャンの北朝鮮化を指摘しましたが、北朝鮮よりたちの悪い独裁国家になりました。 前回の投稿でも指摘したのですが、アゼルバイジャンにとって戦略的に重要なのは、ナヒチェヴァン・トルコへの回廊確保です。なんと今回の停戦協定でアゼルバイジャン車両がアルメニアを通過してナヒチェヴァンにアクセスできるようになりました。これは大きな戦果でしょう。ナヒチェヴァンの不動産は買いですね。またこれからトルコ交易の物流業とトルコへの農産物等の輸出業は栄えるでしょう。 おそらくこのナヒチェヴァン回廊以外にも表に出ていない経済的な合意があるはずです。アゼルバイジャンから油・電気・水・食料を買えだの、アルメニア上空を飛行機飛ばさせろだの色々要求しているはずです。こういった経済的な合意も徐々に表に出てくるでしょう。 不覚にも今日まで気づかなかったのですが、なんとAnglo Asianが権益を持つ金鉱山がカラバフにあるらしいです。今回アゼルバイジャンがカラバフを占領したことで鉱山の開発ができると。 オイルマネーに加えて、ゴールドとはなんとも恵まれた。今後ますますアゼルバイジャンとアルメニアの国力差は拡大しそうです。 停戦後のPKOにトルコ軍が参加するとか参加しないとかいう話にもなってます。 トルコをこのカラバフ紛争の当事者としてテーブルにつかせることに成功したのも、トルコ・アゼルバイジャンとしては大きな戦果でしょう。この一件はトルコの軍事・外交プレゼンス拡大、ひいては、トルコ民族復権の第一歩となりそうです。 びっくりしたのはイランがアゼルバイジャン支持を明確に打ち出しましたね。アルメニアはショックでしょう。 なぜイランはこのタイミングでここまで明確にアゼルバイジャン支持を打ち出したのか。アゼルバイジャンに水源を押さえられたため友好関係を築こうとしているのか、イラン国内のアゼルバイジャン民族の独立運動を抑えるため「国境は尊重しましょうよ」というポジションを取っているのか、アルメニアに見切りをつけて勝ち馬に乗ったのか、イラン国内のアゼルバイジャン民族に忖度したのか、なにか外交面・経済面での見返りと引き換えにアゼルバイジャン支持を打ち出したのか。妄想が尽きません。 パシニャン首相の敗北宣言を読んだアルメニア人は、まるで玉音放送を聞いた終戦日の日本人のような心境だったでしょう。首都エレバンは敗戦を受け入れられないアルメニア人で混乱しているようですが、戦力差を考えれば降伏は妥当だったと思います。 ただ判断が遅すぎです。戦争に突入する前から色んなシミュレーションはしていたはずですし、勝ち目がないことも、ロシアが助けてくれないことも明確だったはずです。 であればロシアの仲介を待たずに開戦当初にとっとと降伏宣言してれば良かったのではないかと思います。そうしていればここまでカラバフの領土を削られることなかったはずですし、国際世論も味方につけれました。強硬な国内世論やメンツとの板挟みになり動けなったのだと思いますが、早めに降伏してようが遅れて停戦しようがいずれにせよパシニャン政権は持続不能です。名を捨てて実を取った方が良かったのではと思います。 しかしパシニャンも嫌なタイミングで首相になって、とんだ貧乏くじ引いちゃいましたね。 一点だけアルメニアにとって追い風なのは、アルツァフ(カラバフ)国家承認の動きが出てきていることです。一ヶ国でもアルツァフを承認する国が出てくるとアゼルバイジャンとしてはとても面倒なので、案外短いスパンでStepanakertにむけて再侵攻するかもしれません。 12月1日までにアルメニア軍はカラバフから撤退予定なので、アゼルバイジャン軍はその様子をじっとり眺めつつ、アルメニア軍がいなくなったらひっそり民族浄化をして、アゼルバイジャン人を入植させ支配を固めつつ、機を見て再侵攻という流れかと思います。 さてさて、ロシアは面目丸つぶれです。 (アメリカも失敗した)停戦の仲介を達成し、Stepanakertへの新経路Lachin corridorの警備員を務めるという最低限の役目は果たしたものの、東欧・中央アジアの同盟国からは「トルコに対して弱腰」で「いざという時に守ってくれない」ロシアというイメージがついてしまったでしょう。この衝撃はベラルーシにも波及します。 とはいえトルコ・アゼルバイジャンはロシアの顔に泥を塗るつもりは毛頭なく、良好な関係を継続したいと考えているはず。アゼルバイジャン人の反露感情を高めることなく、ロシアがアルメニアを守ったという実績をつくるための次なるシナリオを準備していることでしょう。
1 コメント
管理人
11/14/2020 08:41:05 pm
良記事
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