3月に導入されたルーブル・金ペッグはルーブル為替相場に安定をもたらした。 「ロシアからの資源輸入をルーブル払いにせよ」という要求は、外為市場にルーブル買い圧力を生み出し、またアービトラージによりロシア国内への金流入を促す。 ロシアが金による資源輸入の支払いを受け付けると、ロシアへの恒常的な金流入が発生し、また、インフレが進行するほどルーブル高が進むという悪魔の通貨戦争スキームが完成する。 前回投稿にて、ロシアのウクライナ侵攻の目的は農地強奪であると指摘しました。 ロシアの輸出経済の成長エンジンであり、また、第三世界の胃袋を握る戦略物資でもある小麦の増産を支えた農業生産性の向上が頭打ちになり、ロシアが農産物のさらなる増産を達成するには農地を拡大する必要に迫られている。 眼前に広がるウクライナ南部ロシア系住民居住区の肥沃な農地・水源を強奪し、欧米からの痛くも痒くもない経済制裁に耐えつつ、農産物輸出を拡大し、また、世界の胃袋を握る超食糧大国として君臨するのは極めて合理的な経営判断である。 要約するとこんな↑感じでした。上記の視点はある程度当たってると思います。 「ロシア系住民の保護」とか「民族主義者との戦い」とかクソどうでもいい理由は忘れてください。安全保障・プーチンの独裁体制維持に加え、農地強奪もウクライナ侵攻の大きな理由だと思います。 ただし、私の見通しは甘かったようです。プーチンはもっともっともっと大きな絵を描いているようです。 プーチンショック 〜 新ゴールドスタンダード 西側メディアは沈黙していますが、3月25日にロシア中央銀行は『金1グラム=5000ルーブル』の固定レートで国内金融機関からゴールドを買い取るという声明を発表しました。どうもこれは6月30日までの時限措置のようです。 まるでゴールドスタンダード(金本位制)です。 効果は絶大でした。 ウクライナ進行後、一時150ドル水準にまで進んだルーブル安が、たちまち進行前の80ドル水準にまで戻り、ルーブル切り下げ不安を一掃しました。まぁロシア国内で固定レートで金とルーブルが交換できるので、その水準でドル・ルーブルのレートが落ち着くのも当たり前ですね。 6月30日以降どうなるか分かりませんが、仮にこの固定交換レートが継続され、引き続き、金1グラム=5000ルーブル、だとしましょう。 するとこれは、金価格が上昇する度にルーブルの為替レートが切り上がることを意味します。当たり前ですが。 ↑この固定交換比率から算出される理論USD/RUBレートのチャートを載せておきます。 今後、仮にインフレや地政学リスクイベントがまだまだ続くとすると、ドル建ての金価格は上昇し、すなわちドルは減価します。そして金にペッグされたルーブルはドルに対して切り上がります。 これはインフレ環境下においてルーブルがめちゃくちゃ強い通貨になることを意味します。 さて、本投稿執筆時での金価格は$1,929/OZで、USD/RUBレートは84です。これは理論価格に比べてディスカウント(割安)されてる状態です。 ルーブル為替がディスカウント状態でなにが起こるかと言うと、アービトラージャーは外為市場でドルを売って割安なルーブルを調達します。調達した割安なルーブルをロシアに持っていき金に替えます(たぶん中銀レートにちょいとプレミアムを付けた価格で)。ロシアで購入した金を金市場で売ってドルに替えれば利鞘が稼げます。利鞘がなくなる水準までルーブルの為替レートは上昇し、理論価格に近づきます。 しかし、これがプレミアム(外為市場のルーブルが割高)の状態になると恐ろしいことが起こります。これは後述します。 要は、世界第二位の金埋蔵量と世界第五位の金準備を誇るロシアが、中銀が固定レートで金を買い漁ることでルーブルの為替レートを安定させたのです。 ペトロルーブル ロシアはまた西側非友好国に対し資源輸入の支払いをルーブルで行うように要求しています。断ればガスの元栓を締めることも辞さずという剣幕です。ペトロダラー(石油本位制)ならぬペトロルーブルですね。 西側はこの要求を断固拒否する見通しですが、ハンガリーはロシアに同調する動きを見せています。 もし、プーチンが強硬で、西側がルーブルでの支払いを了承せざるを得なくなったと仮定しましょう。一体何が起きるか?? Austrolibは興味深い指摘をしています。 このロシアから資源輸入のルーブル支払いのために、外為市場では恒常的にルーブル買いニーズが発生し、為替レートは先の理論価格に比べプレミアム(割高)な状態となり得る。するとアービトラージャーは金を「金1グラム=5000ルーブル」でロシア中銀に売り、調達した割安なルーブルを割高な外為市場で売却する。 すなわち、西側非友好国がルーブル払いを了承すると、外為市場でルーブルが割高になり、結果、金の買い取りレートが固定されたロシアに金がどんどん還流するという事態になりかねないのです。 プーチンがこだわるルーブル払いの目的は、単なる通貨価値防衛だけではなく、おそらく世界中からゴールドを吸い上げることも念頭においているのだと思います。 はたして非友好国はルーブル払いを了承するのでしょうか? プーチンには必殺の一手があります。『ルーブルで払ってくれたらガス代割引するよ』と言えば良いのです。 すると財政の厳しい国からドミノ倒し式にルーブル払いを了承する流れになるかもしれませんね。 ルーブルって小さいながらも既にかなり国際通貨なんですよ。 前回投稿で指摘したように、ロシア政府の対外債務は7割ルーブル建てです。 また、↑のチャートで示すように、ロシアの貿易決済もかなりの割合がルーブル建てです。 これに加えて非友好国の資源輸入決済もルーブル建てになれば、もうルーブルは国際基軸通貨の一角でしょう。 ドルが紙切れになった日 ご高齢の皆様は1971年のニクソンショックを覚えているでしょうか?それまで1オンス=35ドルの兌換比率で固定されていたドルと金とのペッグを「やーめた」と突然ちゃぶ台ひっくり返した衝撃を。 国際収支の赤字と厳しいインフレでドルの切り下げ圧力が強まり、また金準備もすっからかんになった米国はもはや通貨を切り下げるしかなく、その日から米ドルは(そして他の通貨も)金の裏付けのない紙切れとなりました。 目下、政府国債を担保に中央銀行が通貨を発行する仕組みとなっているのですが、要は『紙(国債)を担保に紙(通貨)を発行してる』だけです。 FRBことFEDERAL RESERVE BOARDには、Reserve(金準備)がないのです。さらに言うとFRBは100%民間保有(主にユダヤ資本)の民間銀行なので、Federal(連邦政府)ですらありません。 「じゃあロシアも金準備がなくなったらまたルーブル切り下がるじゃん」と思われるかもしれませんが、ロシアはこのリスクを回避可能です。 ZeroHedgeは『ロシアが資源輸出の支払いをゴールドで受け取る』ようにすれば良いと指摘しています。これで無限に湧き出る油が金塊に変わり、持続的にロシアに金が還流するようになり、金準備は維持可能です。資源国・輸出立国ならではのソリューション。 ロシアのエネルギー副大臣Pavel Zavalnyは既にこの資源輸出のゴールド払いオプションに言及しています。曰く、ロシアはドルには興味がなく信頼もしておらず、金かルーブルかビットコインか輸入元友好国通貨(人民元とかトルコリラとか)で資源輸出の決済をしたいとのこと。 ガチでドルを殺す気です。さぁNATOは動くか? はたして輸入国は金での支払い検討するのでしょうか? プーチンには必殺の一手があります。『ゴールドで払ってくれたらガス代割引するよ』と言えば良いのです。
50年ぶりのパラダイムシフト、かもしれません。 情景が目に浮かびます。 200X年、クレムリンの薄暗い小さな会議室で『Project Z(仮名)』が発足。 ミッションは「ロシアを再び超大国にする」こと。 絶対に西側に漏れてはいけない極秘のプロジェクト。 メンバーはおそらくプーチンと信頼できる幹部と優秀なアナリストだけの少数精鋭チーム。 それからは雨の日も風の日も吹雪の日も、経済・地政学・外交・金融・軍事あらゆるパラメーターを分析してシナリオを練り上げてきたのでしょう。 そしてついに欧米をぎゃふんと言わせるタイミングが来たのです。 ↑規模感だけ比較しておきます。 ロシアの石油・ガス輸出は一日当たり7億ドル程度で、ルーブルの外為取引高の1%程度に相当します。この輸出の何割かがルーブル決済になれば、外為市場でのルーブル純買い圧になりルーブル為替にプレミアムがつき、アービトラージャーによりじわりと金がロシアに還流するのではないでしょうか。 もし、この石油・ガス輸出の数%でもゴールド決済になれば、それはそれでまとめて金がロシアに還流し、ロシアはハッピーでしょう。 まだまだ米ドルに比べて小さいですが、ペトロゴールドルーブルは侮れない存在だと思います。 デジタルゴールド ロシアのエネルギー副大臣Pavel Zavalnyが言及した通り、ロシアはビットコインでの貿易決済にもオープンです。 これは上述のペトロゴールドルーブルが上手く行かなかった場合のヘッジになりますし、ロシアが閉め出されたSWIFT国際送金網の代替にもなり得ます。 水力発電による安価な電気代と寒冷な気候を活かして、ロシアはビットコイン採掘のハッシュレート(計算能力)の11%も有しています。 ロシアの目指す新ゴールドスタンダードにはデジタルゴールド(ビットコイン)も絡んでくるのかもしれません。 通貨と戦争 思い出されるのは2003年のイラク戦争です。 グリーンスパンが「イラク戦争の目的は石油だった」とゲロしてしまい物議を醸しましたが、あの戦争には通貨戦争という側面もありました。 フランス・ドイツ・ロシア・イラクがタッグを組んでイラク産の石油をユーロ建てで輸出しようとしたのです。これはニクソンショック以降、石油貿易の決済を独占することにより価値を担保してきた米ドル(ペトロダラー)に対する大いなる挑戦・裏切りでした。激怒したブッシュは無理矢理戦争をおっ始めてこの企てを阻止したのです。 ところで当時のアメリカの偽旗作戦は酷かった。 「イラクは大量破壊兵器を保有している」と言いがかりをつけて地上部隊まで派遣してイラクを掌握したのですが、案の定大量破壊兵器なんてなかったのです。 この茶番に気づきますか?もしイラクが本当に大量破壊兵器を持っているのであれば、アメリカは地上部隊なんて派遣できません、だって全滅しちゃうもん。 アメリカはイラクが大量破壊兵器を持っていないことを知っていたのです。知っていたから地上部隊を派遣できたのです。大量破壊兵器を持っていないと知っている相手に対して「お前は大量破壊兵器を持っている」と言いがかりをつけて戦争したのです。 イラク戦争に比べれば、ウクライナ戦争におけるロシアの偽旗作戦の方まだマシに見えてしまうのは私だけでしょうか? ロシアに話を戻しましょう。 欧米諸国は全力でウクライナに祈りを捧げていますが、アラブ諸国やアフリカ諸国は「世界中で散々侵略・略奪・虐殺をやってきた欧米人が今更なに言ってんの?」と言わんばかりの冷たい眼差しで欧米諸国をしれ〜っと眺めています。 世界から孤立しているのはロシアなのでしょうか?それとも欧米諸国に今までの悪事のしっぺ返しが来るタイミングなのでしょうか? さて、ロシアの企てているであろうこのペトロゴールドルーブルの仕組みは、ロシアでなくても良いのです。アラブやアフリカの資源輸出大国であれば真似できてしまうのです。彼らとロシアとの違いは核兵器の有無ぐらいでしょう。 彼らはプーチンの通貨戦争の行く末を見極めているのです。そしてあわよくば自国通貨にもロシアと同じスキームを適用し、欧米人に一泡吹かせてやろうと心の底で思っていることでしょう。 しかし、通貨というのは怖いものです。イラク戦争の例もあるように、通貨は戦争に直結します。 普段は文明人のフリをしている欧米人も、銭が絡むと化けの皮が剥がれ容赦がなくなります。 第三次世界核大戦の足音が聞こえてきたと感じるのは私だけでしょうか?? 戦争はいけません。 世界大戦を防ぐべく、私も全力で祈りを捧げたいと思います。 ウクライナ戦争 って結局なんなの?って疑問にここで私の考えを総括しておきたいと思います。
米ドルが独占してきた石油・天然ガス決済の牙城を切り崩し、また、ルーブルをコモディティー(金・小麦・天然ガス・ビットコイン等)の価値に裏打ちされたコモディティーとの交換チケットとして再定義し、さらにコモディティー供給を牛耳り兵器化することで、西側が構築したマネーゲームを根本からゲーム・チェンジしようとしているのです。 そのためにウクライナのコモディティー(小麦、とうもろこし、鉄鉱石、ネオンガス等)が必要であり、また、覇権戦争を仕掛けるカタリストがウクライナ戦争だったのです。 ウクライナ国民にとってはいい迷惑ですね。 (追伸)ツワモノ達のコーカサス ついでに久々にコーカサスのことも書きましょう。 このウクライナ戦争にて、コーカサス三国は独特の動きを見せております。
こいつらなんでこんなに愉快なんでしょう。逸材揃いです。 まぁアゼルバイジャンのカラバフへのプチ侵攻は出来レースだと思います。 以前の投稿でも指摘したのですが、トルコに対し弱腰の印象がついてしまったロシアには、同盟国アルメニアを守ったという『実績』作りが必要なのです。 ウクライナ戦争のため、カラバフにロシア軍不在の空白状態ができ、その隙にアゼルバイジャン軍が進軍し、後々ロシア軍が戻ってきたらアゼルバイジャン軍が後退するのでしょう。三歩進んで一歩下がるです。 するとアゼルバイジャンは二歩進めてハッピーです。ロシアもアゼルバイジャンを一歩下がらせた実績ができてメンツが立ちます。 ソビエトって気持ち悪いでしょww ジョージアでは親ロ派自称独立国の南オセチアがロシア編入を目指す国民投票を行うようですね。何を考えているのやら。 それでは今回はジョージアの人気ユーチューバーTrio Mandiliの曲で締めましょう。Kakhuri! 皆さんご一緒に『ハ〜ラ〜ラ〜レ〜♪』 やはりジョージア文化は素晴らしい。
パクリバイジャンとは一味違う。
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